相続人間の話し合いの場ではお互いに感情的になってしまったり、損得勘定に走りお互いに譲歩できなかったりすることがあります。こうなると、いつまで経っても遺産分割協議はまとまりません。
このような状況の解決策の一つが、家庭裁判所の遺産分割調停です。
この調停というのは、いわゆる「裁判」ではありません。
家庭裁判所の家事審判官や調停委員が、相続人どうしの意見や主張を聞きながら、解決案を提示したり、アドバイスを繰り返したりします。つまり調停とうのは、相続人全員での話し合いによる解決を目指すものなのです。したがって、家事審判官や調停委員による提案には強制力がありません。相続人が納得いかなければ拒否して、話し合いを続けることになります。
調停によって、相続人全員が納得できる解決策がまとまった場合は、調停調書が作成されます。
調停は「裁判」ではありませんが、この調停調書は裁判における「判決」と同じ効力があります。したがって調停調書に従わない相続人がいた場合には、強制執行により調停調書内容の実現を図ることができるのです。
さて調停はあくまでも話し合いですから、相続人どうしの利害が絡み合って、まとまらないことがあります。調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始され、家事審判官(裁判官)が、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況、これまでのいきさつその他一切の事情を考慮して、審判をすることになります。
審判は「家庭裁判所が決定を下す」ことが目的となりますから、調停のように話し合いでの合意を目指すものとは大きく性質が異なります。
審判の内容について納得できない相続人は、審判が下された日の翌日から二週間以内に「即時抗告」の手続きを行うことができます。この期間に何もしなければ、相続人は審判の内容に従わなければなりません。
審判の結果にも納得いかない相続人は、最終的には訴訟での長い争いを覚悟しなければなりません。