不動産の相続登記をしていなかったことで複雑な相続に発展したケース
状況
Aさんは、ご高齢のため、施設に入所されていました。Aさんのご主人は昭和45年にお亡くなりになっており、身の回りのお世話はAさんの妹さんの子供さんであるBさんがされておりました。
Aさんはご自宅へ戻る見込みもないため、そのご自宅を処分したいと希望されており、その意向を受けたBさんが土地・建物の名義を調べたところ、昭和45年にお亡くなりになったAさんのご主人の名義になっており、ご自宅を処分する前提として、相続登記が必要な状況でした。
司法書士の提案、お手伝い
Aさんのご主人の戸籍謄本を請求し、相続関係を調査したところ、Aさんのご主人がお亡くなりになった時点の相続人はAさん及びご主人のお兄さんであることが判明しました。ただし、その後、昭和63年にご主人のお兄さんもお亡くなりになっており、相続権はご主人のお兄さんの子供さん達へ承継されていました。
さらにその子供さん達は総勢6名おられましたが、そのうち4名の方がお亡くなりになっており、さらにその子供さんに相続権が承継されている方もおられました。
結果として、全国各地にAさんのほかに13名の相続権を承継されている方がおられることが判明しました。これらの皆様すべてにご印鑑をいただかないと不動産の相続登記は完了しません。
Aさんも、これらの相続人の皆様とは面識もなかったため、相続関係説明図等の資料とともに、状況を説明したうえで、謝礼金と引き換えに相続分の譲渡に応じていただきたい旨のお手紙を司法書士側で用意し、Bさんのお名前で郵送をしました。
このお手紙には、皆様の御意見(了解するか否か、ほかにご希望はあるか等)をアンケート形式でご記入していただく返送書類も同封しました。
結果
結果として、幸いにも相続人の皆様全員からお返事をいただき、相続分の譲渡に応じていただけることになりました。
司法書士が相続分譲渡証書を編集し、謝礼金とあわせて相続人の皆様に書類を郵送しました。無事に調印も整い、Aさん名義とする相続登記が完了しました。皆様から調印に応じていただけた要因として、正確な状況を客観的に書面でお伝えできる資料とともにAさんの誠意があるお手紙のご用意をお手伝いさせていただけたことが大きいと思われる事例です。